HRリーダーズインタビュー

[第1回]~経営戦略から人事を考える~vol.1

株式会社LIXILグループ

執行役副社長 人事・総務担当

八木 洋介氏

2016年6月10日

人事コンピテンシーモデルの捉え方 
~自社のストーリーを立てよ!

 この人事コンピテンシーモデルやそれを構成する1つ1つの要素を金科玉条のように捉えるのではなく、材料として見て、このモデルを自社の文脈でどう読み込むかを考えなくてはなりません。人事戦略というのは、企業が勝つための人と組織の使い方だと認識しています。このコンピテンシーモデルにあてはめて考えると、組織が最高のパフォーマンスを出すために、人と組織をどうするかを考えるストラテジックポジショナー(LIXILで言えばストラテジックドライバー)のコンピテンシーを発揮するところから始まります。そのために必要なことは何かとブレークダウンしていくと、人を活かす、モチベートする、最適組織を作って人をエンゲージする、基本的にはこれだけです。人を動機付ける要素は、キャリアと報酬です。そして、組織のレイヤーをとにかく少なくして、そこに属する人々を一つの方向に向けることができさえすれば、必ず勝てます。こうしたブレークダウンした要素が他の8つのコンピテンシーに包含されているのですが、基本的には個々のコンピテンシーを見ていくのではなくて、全てストラテジックポジショナーを基点に、その構成要素を抽出し、その実践のために何が必要かを、きちんと整理して、ストーリーを立てるべきです。

ストラテジックポジショナーのコンピテンシーを発揮するときに気をつけなければならないのは、確固たる自身の判断軸を持っておくことです。このコンピテンシーモデルには人事部員が外部環境やステークホルダーの期待を把握して、人事実務に活かす必要性が示されていますが、内外の動きを評価する前に、「自分自身がどう考えているのか」という人事観を持つべきです。それがないと、ステークホルダーの意見や環境変化にただ流されるだけです。例えばステークホルダーといっても顧客、社員、地域住民からサプライヤーまで様々で、それぞれ言うことが違うのですから、それを聞く側は、自分がいったい何をしなければならないのかしっかりとした軸を持って接しなければ、本当に正しい方向に組織を変えていくことは難しいでしょう。

加えて、これらのコンピテンシー1つ1つが互いに連関していることにも留意する必要があります。戦略に基づき人を選んできて、育成して、活用するという基本の流れの中で、常に人の意欲に働きかけていくことが求められますが、トータル・リワード・スチュワート、つまり報酬管理に優れているだけでは不十分で、キャリアといった内発的動機付けを実践するためにはヒューマンキャピタルキュレーターといった他のコンピテンシーも同時に発揮していかなければなりません。それぞれの人事活動のストーリーの中で、各コンピテンシーが相互補完し合っているのです。

また、このコンピテンシーモデルに固執するのではなくて、自社にとって大切な能力や基本行動を付け足すアレンジも必要でしょう。例えば、戦略実現のために必要な行動を起こすためには知識が必要です。その知識はアナリティック(情報分析力)やテクノロジーにかかわる知識だけではありません。例えばもっと「ヒト」に関する知識も重要で、人に影響を与えために何をするべきか、ということについても人事としてなんらかの知識を習得しておく必要があります。